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『無雙直傳英信流和極意巻』
居合の名門、無双直伝英信流の最古の秘伝書に、妖しき武芸者長谷川英信の驚くべき實相を観る

武芸者
宮本武蔵や柳生宗の少し後くらい、各地の日本伝武芸がいよいよ世界に冠絶する流儀武術として纏められ始めていた幕藩体制の始め頃、後の世の武道界に多大の影響を与えることになる一人の妖しき天才武芸者が出現した。その武芸者も一個の流儀武術の元祖ではあったが、武蔵や柳生、小野といった当時の剣豪連ほど著名ではさらさらなく、人口に膾炙された武人では全くない。実際現代の剣豪小説に現れることも映像化されたことも殆どなく、一般の者には全く認識されていない全く無名の武人といえるだろう。
しかしながら現代武道にこれほど影響を与えている武人は本当に数少なく、日本が長い伝統の中で育んだ身勢文化、現世にまでに通ずる身体極意の世界を大成して伝えた大変な武芸者であるのである。
近代居合道の大祖ともいえる謎の武芸者、長谷川主悦助英信の本質を極近年発見された驚異の秘伝書を繙き追求してゆこう。


現代居合道の基盤は正に土佐居合の中にある。これは紛れもない事実であろう。全国で施行される古流居合術の九割以上は無双直伝英信流か夢想神伝流であり、制定居合といえども殆ど土佐居合を基盤をして纏められたといえるのだから(※註 夢想神伝流は中山博道師範の纏め上げと若干の変革があったが、技の基盤と伝系は完全に土佐居合であり、多少の系脈の差異による名乗り変えとして捉え、無双直伝英信流系として論じてゆくこととする)。
そして現在、日本伝古流武術としてもっとも著名にして多くの修行者を有するのは正に土佐居合であり、土佐居合とはすなわち無双直伝英信流である。現代武道界で隆盛する比較的メジャーな古流武術としては神道夢想流杖術、天道流薙刀術、直心影流薙刀術などがあるが、修行者数では恐らくそれぞれ土佐居合に及ばず、英信流こそは正に天下第一、天下無双の古流武術といえるのではあるまいか。


無双直伝英信流は長谷川英信を開祖とする居合術の名門である。それでは現代の武道界にかくまでの影響を与えた長谷川英信とはそも何者かという問題になるが、これは前述した如く根本資料は真に少なく、本当に謎の武芸者なのである。幕末には土佐の御流儀として随分隆盛したとみられ、膨大な秘文書が現存しているが、残念なことに殆どが幕末から明治にかけての資料にすぎず、流儀の技法内容を窺うことは出来ても流儀伝流の歴史や実態、そして開祖の本質を窺うことは中々に難しいのである。ただ一般的には無名の武人であるが、古流武術研究界では長谷川英信は中々妖しき武芸者として認識されており、単なる居合術の大成者という観念のみならず、和術の達人であり、宝蔵院流槍術、戸田流棒術、無究玉心流などなど、多くの武術流儀の継承者であったとされている。ただし筆者自身、長谷川系の宝蔵院流や無究玉心流などの伝書を見たことがあるが、大体が後世の伝書が多く、開祖の實相には中々迫りがたい部分がある。
ところが近年土佐居合の源流ともいえる信州無双直伝流系資料が多数発掘され同流の本質をある程度深く窺うことが可能となってきた。信州系には開祖から三代目の小松風随の直筆資料が多数含まれている。これらは享保年間の資料であり、今から二百七十年近く前の同流の古文書として極めて貴重な存在である。

信州のスタンス
信州の資料を解析してゆくと土佐文献のみでは窺えなかった同流の驚愕の歴史が次第に浮かび上がってくる。信州資料の立場から言うと開祖は和義(柔術)の達人であり、居合術は二代目の荒井清哲が他系から混入したことになる。これは真に驚くべき歴史観といえ、土佐の伝承とはもちろん矛盾する。土佐では林崎甚助を遠祖とし、長谷川英信が大成して伝えたと言う立場をとるが、この様な沿革は土佐でのみ醸成された造られた流儀伝説であると言うことになる。

分脈
信州資料からの立場から述べたが、これらの記述を本当に額面どおりにそのまま受け取って良いものなのであろうか。確かに信州文献は土佐秘文書群よりもかなり古く、流儀の真実を明らめる為の極めて貴重な資料群である。しかし高い目で資料比較をなし、伝系を分別して考えると信州無双直伝流が土佐無双直伝英信流の前身と言うわけ必ずしもないことがわかる。と言うのは信州資料と言えど所詮は三代目からの資料であり、土佐英信流とは実は二代目からの分かれなのである(系図参照)。と言うことは開祖、および二代目からの立場から言えば信州系も土佐系もそれぞれ分家であり、信州系から土佐系へ流れた訳では必ずしもない。そして各分脈における伝承に相違がある場合、その真偽のほどを探るのは中々難しい命題となるだろう。
その真実を明らめるためには本来、より古い時期の流儀の伝書をみる必要があるからである……。

初代
流儀の根源を探るには開祖初代の伝書を解析するにしくはないが、残念ながら長谷川英信の直筆伝書は現在未だ発見されていない。現代においてこれだけ多数の修行者を擁する古武道界の最大流儀であり、無数の修行者、研究者が歴史の解明に努めて来たが、開祖時代の資料は発見できず、本当に謎の残る流儀なのである。筆者も武術伝書研究の立場から信州系、土佐系以外の資料も出来る限り手を尽くして調査し千六百年代の古い資料をも幾つかみてきたが、やはり開祖から代数を幾つか重ねており、中々にその本質に迫ることが出来ないでいた。

大発見
ところが極最近遂に筆者が長年求めていた幻の伝書を上州の氣樂流の御宗家であられる飯嶌文夫先生が発見された。そして研究の為にその貴重な資料の写しを提供を頂く事が出来たのである。
その内容をみて筆者も流石にひっくり返った。伝系を見ると長谷川英信の次代、「熊谷兵作」と言う者が発行した伝書であり、年代は寛文八年(1668)、正に最古の伝書ではないか! 三代目が発行した信州伝書も享保年間が上限であったが、それより正に七十年も遡ることになる。しかも伝書は彩色の絵図入りであり、保存状態も完璧である。この様な流儀の秘書を探求するのは真に研究者冥利に尽きるところであり、いよいよその驚異の秘伝書を読み解いてゆこう。

熊谷兵作の正体
伝書の作成者は二代目「熊谷兵作」となっており、信州系や土佐系とは別系の新たな系脈が現れたのかと筆者も最初は思い、上州無双直伝流の流れまでを想定したが、周辺資料をみてゆくとやがてこの「熊谷兵作」の正体が判明した。
『朝陽館漫筆』と言う古文書に次のような記載がある。
「荒井清鐵、又曰、熊谷兵作と云者,やわらを鍛錬して教へける少分なる者のうえへ、不仕合有て所を立退、江戸へ出、師家を立、渡世とする間に弥功積て、今は荒井清鐵など名乗り、やわらは脇へなして居合剣術など指南して奇妙不思議を得たりなどと言はやさる。最早八十歳計成べければ、奇妙を化るも尤もなり」とあるのである。
つまり熊谷兵作と言うのは信州系、土佐系で二代目とされる「荒井清哲」その人であったわけである。そして別の資料『大矢氏物語書留』には「武州熊谷宿暫止」とあり、恐らく武州熊谷に在住していたおりの名乗りであったのだろう。この資料を武州無双系資料として捉えたい。

流名
さてこの伝書で最初に驚くべきことはその巻題の流名である。『無双直伝英信流和極意巻』とあり、正にこの時期に確かにこの流儀は「無双直伝英信流」と名乗っていたと言う事である。実を言えば筆者は信州から土佐への流れの中で信州「無双直伝流」から土佐の「無双直伝英信流」への変革が行われた事を想定していたのではあるが、その観察は完全に間違っていた事になる。現代における無双直伝英信流と言う流名は二代目の時期から全く変わっていなかった。恐らく他系からの居合伝をも統合する立場において信州では「無双直伝」系武術として伝えたと言うことなのであろう。しかし土佐の立場はあくまで長谷川英信を通した無双直伝英信流居合術として伝承された。
つまり流名と言う立場においては土佐系の方が正名を墨守している事になる。しかしながら今回の伝書が居合ではなく、あくまで「和(ルビ・やわら)」の伝書であることには注意しなければならない。この部分においては英信を和術(と棒術)の継承者のみとして捉える信州の立場の方が確かに正しいのである。

和極意
伝書の内容は開祖英信が伝えた和術の極意部分を象徴的な絵図にて認めたもので、同系の伝書は信州にも、そして土佐にも伝承しており、確かに流儀の核となる貴重な資料である。そして年代的にそれらの正に源脈、原典となる資料であり、後世資料には見られない貴重な書き込み部分もある。その点において、飯嶌先生からの指摘を頂いたのであるが、ここにこそ上州荒木流の痕跡があると言うことである。調べてみると真にしかりであり、五色の円で描かれた五行極意図に加え、「乳切木」的な図に「不力達者」との書き込みがある。五行極意図は荒木流の伝書にも殆ど同じものが認められ、また「不力達者」は荒木流の極意伝「紅葉之段」に含まれた「無刀達者」と言う教えの名前とほぼ共通する。ここまでの共通性がある以上、両者は何らかの繋がりがあることは間違いないだろう。そしてその事は信州資料における系脈記載の中にもその痕跡が窺えるのである。現在信州資料のみが伝える驚異の秘伝書『和根元之巻』の中に和術における驚くべき伝系図が記載され、英信以前の連綿たる系脈が認められているが、その中に確かに荒木流の開祖、荒木無人斎の名がその先代とも言える藤原勝真とともに現れているのである(名は現れているが、無人斎から長谷川英信への繋がりは明確には記載されいない)。

上州、武州、信州
日本地図を見ればすぐに判明するように上州と武州、信州は正に隣接した三つ巴の地帯であり、古来より人々の往来があり、文化的影響をそれぞれ受け合ってきた。実際上州でも信州無双流系資料が各地にかなり現存しているし、また上州の氣樂流などの当身図と信州無双流当身図との類似性などが指摘されてきた。
そして信州資料の伝脈記載と両流の成立年代から鑑みると確かに荒木無人斎伝捕手の系脈を受けて長谷川英信が無双直伝英信流を打ち立てたのではないかと考察できるのである。そもそも荒木無人斎の兵法が荒木流と呼ばれたのは後代であり、開流当時は無双流(もくしは資料によると夢想流とも)と名乗っていた事は間違いなく、ゆえにこそ長谷川英信が無双直伝を名乗ったのだと考察できるわけである。

伝脈
年代的に言えば荒木無人斎から長谷川英信が直接学んでもそれほど無理のない年代かと思われるが、信州資料が無人斎からの直接の伝系を記していない事、そして土佐資料では同和術を「夏原流」として表記していること、そして無人斎の高弟に存在した夏原八太夫の存在を考えると、荒木無人斎→夏原八太夫→長谷川英信と言う流れが年代的にも無理なく妥当な伝脈ではないかと考えられる。

荒木無人斎の正体
筆者は縁があって無双直伝系武術を深く学び、また武蔵二刀剣法を長く修行してきた関係があり、武蔵周辺の歴史を探る過程において、武蔵の父、作州宮本無二や上州荒木無人斎や伏見の青木鉄人などとの驚くべき関係を今まで大分考証してきた。そしてその果てに、それらの底流を無二斎無双兵法と言うものが貫き、それぞれが単に武術に止まらない不思議な技術と文化を育んできたのではないかと言う一大仮説に到達したのである。
その仮説の内容は膨大な資料監査の果てに浮かび上がってくる一つの武術ロマンとも言え、簡単には解説も難しいが、概略を述べれば荒木流において開祖の先師とされる藤原勝真とは武蔵の父、宮本無二斎藤原一真と同一人物であり、荒木流開祖は本名、荒木無人斎藤原信家と称し、伏見の鉄人十手流の開祖、青木鉄人金家とは兄弟弟子位に当たると言う事。そしてこれらの人脈は皆同族であり、無二斎伝の十手造りの鍛冶技術をそれぞれ学び、そこから武蔵と鉄人金家、無人斎信家等はその鉄加工技術をより精錬して各自それぞれ独特の芸術鍔を造った。特に金家と信家は同系の超絶的な鉄鍛造技術を伝えて、造形にも工夫を凝らし、それぞれ天才鍔師として歴史に名を残す事になる。金家鍔と信家鍔は江戸初期に現れた最高の武人鍔の双璧として以後の武士たちの垂涎の的となった訳である。武蔵は兵法そのものが専門であり、両者ほどには鍔造りにのめり込まなかったが、それでもおりに触れて手遊びに独特のセンスでオリジナル鍔を製作し、それが尾張滞在中、柳生兵庫介を通じて次代の連也斎にまで影響を与え同地で柳生鍔の技術が醸成されていったと筆者は武術系と作鍔文化の流れを大観する者である。

無双兵法の山脈
作州無二斎に始まる無双兵法の流れ、鉄工作技術を含めてそこに内蔵されていたものが各系に巨大な影響を与えた事になる。その無双兵法大山脈の一高山として今回の秘伝書解析によって、長谷川英信の無双直伝の流れまでが加わる事となる。英信流こそは無二斎の無双兵法の系脈を引く正に無双流捕手の優れた継承者であり、英信を通じて無二斎が育み伝えて来た驚異の兵法極意伝が現代武道にまで遺伝し真に巨大なる影響を与えている事になる。このような流れから見ると天下の剣豪宮本武蔵と雖も巨大な無双兵法山脈の中の一高山にすぎず、すべての仕掛け人は作州の兵法古家の当主、宮本無二斎であった事になる……。

ロマンと真実
ざっと宮本古伝兵法と無双直伝武術との不思議な関係、両者を繋いだ荒木無人斎の正体、天才鍔工「信家」について筆者独特の歴史観を交えて解説を試みた。多くの部分は今までいろいろな紙面を借りて考証してきた事項であるが、それぞれ完全証明された訳ではなく、また未だ詳細な考証の業績を公開していない部分もるある。特に荒木無人斎の正体が名鍔師「信家」であるとの論は余りにも突飛な新説(珍説)であり、反発を覚えられた方も多いであろう。筆者も今の時点で何事も断言しようとは思わない。しかしそれなりの根拠と資料に根ざしたかなり自信は確かにあるのであり、いろいろな紙面を借りながらこれからも足りない部分の考証をなし、ロマンと真実の間にあるお掘りを埋め建て、最後の本丸を攻める為に進行してゆきたいと考えている。

今回は飯嶌先生のご好意により新発見の秘伝書の写しを提供頂き、現時点で出来る考察をさせて頂きました。謹んで御礼申し上げます。真にありがとうございました。

 
 
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